NKODICEのNダイスでOCHINCHINが出る確率を計算で求めてみた
2021/06/12

目次
NKODICEについて
NKODICE(んこダイス)とは、目が「う」「ま」「ん」「ち」「こ」「お」でできているサイコロで行われるチンチロリンです。その中で最高役に設定されているのが「OCHINCHIN」なのであります。
ここでは、その「OCHINCHIN」が出る確率について求めていきたいと思います。
また、このゲームにおいては前回で出た役の数に応じてサイコロの数が増える仕様があるので、それを踏まえて一般にサイコロがN個ある場合の「OCHINCHIN」が出る確率についても求めていきたいと思います。
ダイスが5個のとき
まずは手始めにダイスが5個のときに「OCHINCHIN」が出る確率を求めていきたいと思います。
それぞれ6通りの出方がサイコロが5つありますので、全部で\(6^5\)通りあることになります。
この中で「お」が1つ、「ち」が2つ、「ん」が2つ出るようにすれば良いです。
5つのサイコロのうち、「お」が出る通りは\(5\)通り
残り4つのサイコロのうち、「ち」が2つ出る通りは\( _4C_2 = 6 \)通り
そして残り2つのサイコロのうち、「ん」が2つ出る通りは\(1\)通りとなります。
これらをかけ合わせた30通りが「OCHINCHIN」が成立する組み合わせになります。
よって、確率は\( 30/6^5 = 5/1296=0.386 \% \)となります。
ダイスが\(N \)個のとき
ダイスが5個のときはそこまで難しくありませんが、ダイスが\(N\)になると途端に大変になります。
ここで役立つ方法として「余事象を考える」ことが挙げられます。
余事象
「余事象」とは「ある事象\(A\) に対して「\(A\) が起こらない」という事象を指します。そしてある事象\( A \)の確率を\(P(A)\)、\(A\)の余事象の確率を\(P(A^c)\)とすると、\( P(A) = 1 -P(A^c) \)が成り立ちます。
ここで「OCHINCHIN」が揃う事象とその余事象を考えてみましょう。
求めたい確率
まず「OCHINCHIN」が揃うためには「少なくとも『お』が1個以上出る」かつ「少なくとも『ち』が2個以上出る」かつ「少なくとも『ん』が2個以上出る」が必要となります。
ちなみにこう言った「少なくとも~」という表現が出た場合は、余事象を使うと楽に計算が出来ることが多いです。
一方で余事象、すなわち「OCHINCHIN」が揃わないためには「『お』が1個も出ない」または「『ち』が1個以下しか出ない」または「『ん』が1個以下しか出ない」ことが必要になります。
ここで「『お』が1個も出ない」という事象を\(A\)、「『ち』が1個以下しか出ない」という事象を\(B\)、「『ん』が1個以下しか出ない」という事象を\(C\)と置くと、今求めたい確率は
$$1 – P(A \cup B \cup C ) $$
となることがわかります。ここで\( \cup \)は和集合(または)の意味です。
和事象の確率
ここで\( P(A \cup B \cup C ) \)を考えてみましょう。以下の図(ベン図)を御覧ください。
\( (A \cup B \cup C ) \)はこの一番外側の枠を指します。単に\( P(A)+P(B)+P(C) \)とすると、下図のように内部が2回以上数えられることになりますので、引いたり足したりして調整する必要があります。
2回数えられているところを1回にするために\( P(A \cap B) \)、( P(B \cap C) \)及び( P(A \cap C) \)を引きます。すると以下になります。
すると\( P(A \cap B \cap C) \)の部分が3回引かれて0回になりますので\( P(A \cap B \cap C) \)を足せばめでたく\( P(A \cup B \cup C ) \)が計算できることになります。
よって、
\( P(A \cup B \cup C ) = P(A) + P(B) + P(C) \)
\( -P(A \cap B) – P(B \cap C)- P(A \cap C)+P(A \cap B \cap C) \)が成り立ちます。後はこれらをそれぞれ計算していけば良いです。
\(P(A)\)の計算
\( P(A)\)とは、\(N\)個のサイコロを投げて「『お』が1個も出ない」確率です。つまり各サイコロが全て『お』以外の残り5つの目が出る確率となります。つまり $$P(A)= \left(\frac{5}{6}\right)^{n} $$になります。
\(P(B),P(C)\)の計算
\( P(B)\)とは、\(N\)個のサイコロを投げて「『ち』が1個以下しか出ない」確率です。つまり「『ち』が0個または1個出る」確率です。0個の場合は\(P(A)\)と同じです。1個の場合は反復試行の考え方を用いれば、 $$P(B)= \left(\frac{5}{6}\right)^{n} + _nC_1 \left(\frac{1}{6}\right)\left(\frac{5}{6}\right)^{n-1} = \frac{5^n+n5^{n-1}}{6^n} $$になります。
これは\(P(C)\)も同様に計算できます。
ここで \( P(A) + P(B) + P(C)\)を計算すると $$ P(A) + P(B) + P(C) = \left(\frac{5}{6}\right)^{n} +2\left(\frac{5^n+n5^{n-1}}{6^n} \right) = \frac{5^{n-1}(2n+15)}{6^n}$$
となります。
\(P(A \cap B),P(A \cap C)\)の計算
次に\(P(A \cap B),P(A \cap C)\)を計算します。\(P(A \cap B)\)は「『お』が1個も出ない」かつ「『ち』が1個以下しか出ない」となります。先程の\(P(B)\)の計算から(5/6)の部分が「『お』が出ない」という条件を踏まえて(4/6)に変わるだけです。つまり
$$P(A \cap B)= \left(\frac{4}{6}\right)^{n} + _nC_1 \left(\frac{1}{6}\right)\left(\frac{4}{6}\right)^{n-1} = \frac{4^n+n4^{n-1}}{6^n} $$
これは\(P(A \cap C)\)も同様に計算できます。
\(P(B \cap C) \)の計算
ここが一番大変な\(P(B \cap C) \)の計算を見ていきましょう。\(P(B \cap C) \)とは「『ち』が1個以下しか出ない」かつ「『ん』が1個以下しか出ない」となります。つまり「『ち』0個、『ん』0個」、「『ち』1個、『ん』0個」、「『ち』0個、『ん』1個」、「『ち』1個、『ん』1個」の4パターンを計算する必要があります。
・「『ち』0個、『ん』0個」
つまり各サイコロが全て『ち』『ん』以外の残り4つの目が出る確率となる
$$ \left(\frac{4}{6}\right)^{n} $$
・「『ち』1個、『ん』0個」(「『ち』0個、『ん』1個」も同様)
\( n \)個の中から確率1/6の『ち』が1個、それ以外の\(n-1\)個は4/6の『ち』『ん』以外の目になるので
$$ n\left(\frac{1}{6}\right)\left(\frac{4}{6}\right)^{n-1} =n\frac{4^{n-1}}{6^n} $$
・「『ち』1個、『ん』1個」
\( n \)個の中から確率1/6の『ち』が1個、残り\(n-1\)個の中から確率1/6の『ん』が1個、それ以外の\(n-2\)個は4/6の『ち』『ん』以外の目になるので、
$$ n(n-1)\left(\frac{1}{6}\right)\left(\frac{1}{6}\right)\left(\frac{4}{6}\right)^{n-2} = n(n-1)\frac{4^{n-2}}{6^n} $$
よって、\(P(B \cap C) \)は、
$$ P(B \cap C) = \left(\frac{4}{6}\right)^{n} + 2n\frac{4^{n-1}}{6^n} + n(n-1)\frac{4^{n-2}}{6^n} $$
$$= \frac{4^{n-2}(16+8n+n(n-1))}{6^n} =\frac{4^{n-2}(n^2+7n+16)}{6^n} $$
ここで\( P(A \cap B) + P(B \cap C) + P(A \cap C)\)を計算すると、
$$ P(A \cap B) + P(B \cap C) + P(A \cap C) = 2\frac{4^n+n4^{n-1}}{6^n} + \frac{4^{n-2}(n^2+7n+16)}{6^n} $$
$$= \frac{4^{n-2}(32 + 8n + n^2+7n+16)}{6^n} $$
$$= \frac{4^{n-2}(n^2+15n+48)}{6^n} $$
となります。
\(P(A \cap B \cap C) \)の計算
最後に\(P(A \cap B \cap C) \)の計算に参ります。\(P(A \cap B \cap C) \)は「『お』が1個も出ない」かつ「『ち』が1個以下しか出ない」かつ「『ん』が1個以下しか出ない」となります。先程の\(P(B \cap C)\)の計算から(4/6)の部分が「『お』が出ない」という条件を踏まえて(3/6)に変わるだけです。
よって、\(P(A \cap B \cap C) \)は、
$$ P(A \cap B \cap C) = \left(\frac{3}{6}\right)^{n} + 2n\frac{3^{n-1}}{6^n} + n(n-1)\frac{3^{n-2}}{6^n} $$
$$ = \frac{3^{n-2}(9+6n+n(n-1))}{6^n} = \frac{3^{n-2}(n^2+5n+9)}{6^n} $$
となります。
最終結果
これで、\( P(A \cup B \cup C ) \)を求めるのに必要な確率が全て揃いました。
したがって、ダイスが\(N \)個のとき「OCHINCHIN」が出る確率を\(P_{OCHINCHIN}(n)\)とすると、
$$P_{OCHINCHIN}(n) = 1 – \frac{5^{n-1}(2n+15) – 4^{n-2}(n^2+15n+48) + 3^{n-2}(n^2+5n+9)}{6^n} $$
となりました。
具体的に数値を当てはめて計算すると以下のようになります
ちなみに、ダイスが16個以上になれば\(P_{OCHINCHIN}\)が50%を超えるようです。
終わりに
いかがだったでしょうか。感想としては、普通に入試とかで出てきてもおかしくない感じの問題だと感じました。もしかしたらどこかの問題で取り上げられるかもしれませんね。
ここまで見ていただきありがとうございました。