野球の「セーブ」がつく条件、あなたは大丈夫?
2018/05/03

野球において、セーブとは抑え投手につく記録の一つです。
昔は「先発投手は完投してナンボ」という評価が下され、救援投手の価値は低かったのですが、
近年、そして現代にかけて「先発・中継ぎ・抑え」の分業化が進み、勝ち星や防御率とは違った観点からリリーフ投手を評価しようと言うことで、セーブやホールドといったものが登場してきました。
しかし、セーブが抑え投手につくことは知っていても、具体的にどんな条件がつくのか分からない、という人もいるかと思います。
ここではそのセーブの条件を詳しく解説していきたいと思います。
スポンサーリンクセーブがつくための前提条件
まず、前提として以下の条件を全て満たす必要があります。
1.自チームが勝利していること
→引き分け、敗北時にセーブがつくことはありません。
2.勝利チームの最後の投手であること
→先発投手、及び試合の途中に投げた救援投手はセーブの対象にはなりません。
試合終了に導いた投手のみがセーブの対象となります。
3.リードを保ったまま試合を終了させること
→同点、逆転されてしまうと、たとえその後の攻撃で味方が勝ち越したとしてもその投手にセーブの権利がつかなくなります。
4.勝ち投手ではないこと
→勝利投手の権利を満たしている場合はセーブはつかず、「勝ち投手」として記録されます。
つまり、勝ち投手が優先される、ということです
→勝ち投手の権利についてはこちら
5.1/3イニング以上投げていること
→1つもアウトを取れず試合を終わらせることはできないので当然と言えば当然の話です。
これらの条件を満たし、あとは「登板時の点差」「登板したイニング数」「登板時のランナーの状況」によってセーブがつくかどうかが決まります。
スポンサーリンクセーブがつく条件
セーブがつくのは上記の条件を満たし、その上次の条件のうちのいずれかを満たすことを指します。
1.登板時に「3点差」以内で「1イニング」以上投げる
最も一般的なセーブシチュエーションといえば、これでしょう。
最終回の表(裏)、もしくは延長戦の表で勝ち越した裏の守備に各チームのクローザー(守護神)と呼ばれる抑え投手が登板するのはこのためです。
ということで、この条件を知っている人は多いと思います。
ポイントはその投手の「登板時」に「3点差」以内であるかどうかです。
たとえばこのようなシチュエーションだった場合。
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 | 2 | X | 8 |
A投手:7回3失点(1回~7回)
B投手:2回無失点(8,9回)
B投手が登板した8回の表の時点では6-3と3点差でした。
その後、裏の攻撃で2点を追加して8-3と5点差になりました。
このようなシチュエーションでは試合を締めたB投手にはセーブがつくのでしょうか?
答えはセーブが付きます。
B投手が登板した時の点差が3点差であれば、その後同点や逆転でリードがなくならない限り、何点差になってもセーブが付きます。
もちろん1点差などに詰め寄られた場合でも同様で、同点や逆転されなければセーブの権利が消えることはありません。
この辺は注意しましょう。
2.「3イニング」以上投げる(点差関係なし)
こちらはあまり知られていないかもしれませんが、3イニング以上投げて試合を締めるとセーブがつきます。
主に大勝・圧勝しているチームがいわゆる「勝ちパターン(接戦時などの緊迫した場面で投げるほど信頼のおける投手)」を温存したり、若手の育成や故障明け投手の調整としての登板のために3イニング以上(7,8,9回など)を抑えればセーブがつきます。
最近の例では2018年4月25日の中日-巨人戦。巨人が63年ぶりの20得点で圧勝した試合として話題になりましたが、スコアとしてはこのようになっています。
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中日 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 |
巨人 | 1 | 0 | 2 | 2 | 8 | 7 | 0 | 0 | X | 20 |
(巨人)
勝:吉川光:5回2失点(1~5回)
宮國:1回無失点(6回)
S:中川:3回2失点(7~9回)
ご覧の通り、中川投手にセーブがついています。これは3イニング以上投げたからですね。
中川投手が登板したときには「18点差」というものすごい点差がつけられていますが、3イニング以上投げれば点差は関係ないので、18点差だろうと9回に2点とられて16点差に縮まってもセーブがつきます。
3.2者連続HRを打たれると同点、あるいは逆転される状況での登板(イニング関係なし)
これがややわかりにくいかもしれません。
まず、この条件が適用されるとき「イニング数」は関係ありません。
ですので、9回1アウトや2アウトからの登板であったとしてもOKです。
そして、その投手が登板したその時点で、点差が「2+ランナー数」以内であればセーブがつく条件を満たせます。
つまり
ランナーなし:2点差以内
ランナー1人:3点差以内
ランナー2人:4点差以内
ランナー3人(=満塁):5点差以内
となります。
ですから、以下のシチュエーションなら・・・
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 | 5 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
A投手:8回無失点(1~8回)
B投手:0.1(1/3)回無失点
(1アウトを取るも、満塁のピンチを招く)
C投手:0.2(2/3)回無失点
C投手の登板時は、5-0(5点差)で満塁なので、セーブがつきます。
この条件はイニング関係ないので、「1球セーブ」「0球セーブ(投球前に牽制で刺して試合終了など)」も可能です。
セーブ条件まとめ
前提:勝ち投手でない勝利チームの投手がリードを保ったまま試合を締めたとき
1.登板時に3点差以内で、1イニング以上投げる
2.3イニング以上投げる(点差関係なし)
3.登板時に、(2+登板時のランナーの数)点差以内(イニング関係なし)
のいずれかを満たしていれば、該当する投手にセーブがつきます。
実践編
ちゃんと理解出来るのか、ちょっとした確認テストのようなものを行いましょう。
1.このスコア、投手リレーのとき、B投手にセーブはつく?
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
A投手:8回無失点(1~8回)
B投手:1回1失点(9回)
2.このスコア、投手リレーのとき、B投手にセーブはつく?
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 3 | 2 | 13 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 5 | 7 |
(先攻)
A投手:6回無失点(1~6回)
B投手:3回7失点(7~9回)
3.このスコア、投手リレーのとき、B投手にセーブはつく?
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 4 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
(先攻)
A投手:7回無失点(1~7回)
B投手:2回1失点(8,9回)
4.このスコア、投手リレーのとき、C投手にセーブはつく?
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 3 | 7 |
後攻 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
A投手:6回無失点(1~6回)
B投手:1.1回無失点(7回~8回1アウト→状況:ランナー:1,3塁)
C投手:1.2回無失点(8回1アウト~9回)
5.このスコア、投手リレーのとき、B投手にセーブはつく?
球団 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先攻 | 0 | 6 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 11 |
後攻 | 3 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 |
A投手:4回6失点(1~4回)
B投手:5回無失点(5~9回) スポンサーリンク
答え
1.B投手が登板時3点差で1イニング投げているためセーブ条件の1.によりセーブがつきます。
2.B投手が3イニング投げているためセーブ条件の2.よりセーブがつきます。7失点しようとリードを保っているため問題ありません。
3.B投手は8回に1失点したため1-1の同点になってしまっています。よってB投手はセーブが付きません(ちなみに味方の勝ち越しのおかげでB投手は勝ち投手)
4.C投手が登板時、4点差でランナーが2人いるため、セーブ条件の3.よりセーブがつきます。9回の攻撃で7点差になっていますがセーブの有無には影響ありません。
5.一見、セーブ条件の2.によりセーブが付きそうですが、この場合はセーブがつきません。
なぜなら、先発であるA投手が4回しか投げていないため勝ち投手の権利を得ていないからです。よってB投手はセーブではなく勝ち投手になります。
最後に
いかがだったでしょうか?
セーブのことについてまた分からなくなったときは、読み返して頂けると幸いです。
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おまけ
公認野球規則10.20による救援投手のセーブ条件をここに載せておきます。
10・20『救援ピッチャーのセーブの決定』次の3項目のすべてを満たしたピッチャーには、セーブの記録を与える。
(1)自チームが勝を得た試合の最後を投げきったピッチャー。
(2)勝投手の記録を得なかったピッチャー。
(3)下記の各項目のいずれかに該当するピッチャー。
(a)自チームが3点リードのときに出場して、しかも最低1イニングを投げた場合。
(b)塁上にランナーが残されているとき、そのランナーが、ランナー及び相対するバッター、またはランナーと相対するバッター及びその次バッターが得点すれば、タイとなる状況の下で出場してリードを守りきった場合。塁上にランナーが残されていないとき、相対するバッターか、または相対するバッター及びその次バッターが得点すれば、タイとなる状況の下で出場してリードを守りきった場合。
(c)最低3イニング投球してリードを守りきった場合。
セーブの記録は、一試合一救援ピッチャーに限って与えられる。出典:公認野球規則(抜粋) URL:http://urawa-senior.net/kisoku.html