勝ち投手の決め方とは?勝ち投手の権利の条件を徹底解説!

      2018/04/24

勝ち投手の決め方とは?勝ち投手の権利の条件を徹底解説!

みなさんは実況や解説がこのような言葉を聞いたことがありますでしょうか。

「この回を投げれば、○○投手に勝ち投手の権利がつきます」
「逆転!これで○○投手の勝ちがなくなりました」

そして試合が終われば、引き分けを除き

勝:○○(5勝3敗)
負:××(4勝6敗)

こんな感じでニュースなどに出てきます。

一体、どういった基準、条件で勝ち投手を決定しているのでしょうか。

公認野球規則10.19による勝ち投手の条件

野球のルールを定めている「公認野球規則」には、10.19に勝ち投手、負け投手についてのルールが書かれています。

ただし、長い上に「規則」なだけあって回りくどくて理解しにくいと思います。

少なくとも、規則だけ見て理解出来る人は少ないと思いますので、規則に書いてあることをかみ砕いて、出来るだけわかりやすく解説します。

一応、おまけとして、公認野球規則10.19を掲載しておきます。

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決勝点とは

さて、勝ち投手になる条件を考える前に、重要な概念を覚えておかなければなりません。

それは「決勝点」です。

野球において、決勝点とは、勝ったチームが「最後に同点または負けている状態からリードを奪う事になった得点」のことを指します。

たとえば、以下のようなスコアだったとします。

球団123456789
先攻0004010005
後攻0210001004

先攻チームが5-4で勝利していますが、ここでの決勝点はどこでしょうか。

4回表で4点を奪い4-3と逆転してリードを奪って、そのまま逃げ切っています。

よって、この試合での決勝点とは4回の4点目のことを指します。

ではこのようなスコアだった場合はどうでしょうか。

球団123456789
先攻1000020003
後攻00003020X5

これは2018年4月17日に行われたオリックス-ロッテ戦ですが、5回裏に後攻チーム(ロッテ)が3点を奪い逆転します。

しかし、6回表に先攻チーム(オリックス)が同点に追いついたため、5回の裏の2点目は決勝点にはなりません。

7回裏の勝ち越し打(実際はHR)が決勝点になります。

極端な話ですが、以下のスコアだった場合、すごいスコアではありますが、1回表の先制点以降、先攻チームはリードを保ったままになっていますので、先制点が決勝点となります。

球団123456789
先攻21111111110
後攻1111111119

そして、この決勝点が、誰が勝ち投手になるのかを大きく左右しています。

先発投手が勝利投手になる場合

先発投手が勝ち投手の権利を得るためには以下の条件を全て満たす必要があります。

1.登板中に決勝点が入り、そのまま追いつかれることなく勝利する。
2.5イニング以上投げる(例外あり)

一番分かりやすいのは先発投手が最後まで投げきる「完投」ですね。

先ほどのオリックス-ロッテ戦で見てみます。

球団123456789
先攻1000020003
後攻00003020X5
後攻(ロッテ)
石川(9回)

勝:石川歩(3勝0敗)

9回を投げきった石川投手がそのまま勝利投手になっています。

ちなみにセリーグなどではよくあることですが、投手のところに代打や代走などが入り、降板が確定していても次の救援投手が登板するまで「登板中」扱いになりますので、その回に決勝点を挙げられれば、勝ち投手の権利が与えられます。

たとえば下の例において。

球団123456789
先攻1000000001
後攻01000020X3
解説者
後攻チームのA投手は7回1失点の好投を見せると、その裏、2死2,3塁のチャンスにA投手の代打のX選手が2点タイムリーヒットを放って勝ち越し。その後8回はB投手、9回は守護神のC投手がきっちり締めて勝利。

この場合、B投手が投げる前に決勝点が入っていますので、勝ち投手はA投手となります。

また、先発投手に勝ちがつく条件に「5イニング以上投げること」があります。

つまり、5回を投げきらずに降板してしまうと、登板中に決勝点が入ろうと先発投手に勝ちは付きません。

ただし、例外もあります。それは降雨コールドなどで5回で試合が終わった場合です。

この場合は4イニング以上投げていれば勝ち投手の権利が付きます。

ただしコールドゲームでも6回以上まで試合が成立していれば5イニング以上投げる必要があります。

球団12345
先攻103004
後攻31110X6
解説者
後攻チームのA投手は4回を投げたところで代打を送られ無念の降板。5回はB投手が投げた。5回裏が終了した時点で雨が強くなり、結局降雨コールドに。そのためA投手が勝利投手となった。
球団123456
先攻1030004
後攻311100X6
解説者
後攻チームのA投手は4回を投げたところで代打を送られ無念の降板。5,6回はB投手が投げた。6回裏が終了した時点で雨が強くなり、結局降雨コールドに。この場合は6回まで試合が成立しているため、5イニング投げていないA投手は勝ち投手にならず、B投手が勝ち投手に。

これらの違いが分かれば大丈夫です。
:5回コールドなので4イニング投げた先発に勝ちが付く
:6回コールドなので4イニングしか投げていない先発には勝ちが付かない

またオープン戦やオールスターゲームの場合は、先発であってもこのルールには適用しないようです。

救援投手が勝ち投手になる場合

先発の登板中に決勝点が入るものの、5回投げ切らずに降板した場合

先発投手の登板中にリードは奪えたものの、5イニング投げる前に降板してしまった場合、先発投手に勝ちはつかないので、その後に投げる救援投手(リリーフ)の誰かに勝ちがつくことになります。

救援投手が1人の時

これは簡単で、その投手が勝ち投手になります。問題は救援投手が2人以上いた場合です。

救援投手が2人以上の時

「公認野球規則」には以下のような記述があります。

勝利をもたらすのに最も有効な投球を行ったと記録員が判断した一救援ピッチャーに、勝利投手の記録を与える。

ルールに従えば、「勝利をもたらすのに最も有効な投球を行った救援投手」に勝ちがつくようです。

では「勝利をもたらすのに最も有効な投球」とは一体何を指すのでしょうか。

真っ先に思いつくのは「投球回数」です。多くのイニングを稼ぐ救援投手こそ、勝ちに貢献した投手、と言えるでしょう。

ということで、他の投手よりも1イニング以上多く投げた投手がいた場合は、その投手が勝ち投手になります。

つまり、以下のようなケースでは・・・・・・。

球団123456789
先攻3022100008
後攻2102002007
(先攻)
A投手:4回5失点
B投手:1回無失点
C投手:2回2失点
D投手:1回無失点
E投手:1回無失点

救援投手の中で、C投手が2イニング、その他が1イニングですから、C投手が勝ち投手になる可能性が高いです。

ただし、同じスコアでも各投手のイニング数が変わると、勝ち投手が変わる可能性もあります。

A投手:4回5失点
B投手:1回無失点
C投手:2回2失点
D投手:1.2回無失点
E投手:0.1回無失点
※1.2回=1回と次の回のアウト2つ分(2/3回)、0.1回=1/3(アウト1つ)回

この場合は、最も多くのイニングを投げたC投手とC投手と投球回が1イニング未満のD投手のどちらか、より勝利に貢献した投手に勝ち投手の権利が与えられます。

投球内容にもよるのでこれだけだと断定は出来ませんが、1点差をなんとか凌いだD投手が勝ち投手になる可能性は高いですね。

ここまで来ると、公式記録員の判断になり、誰が勝ち投手になるかは分からなくなります。

救援投手が登板中に決勝点が入った場合

これには、
「先発登板中にリードを奪ったが、降板後同点に追いつかれた(or逆転された)が、再び勝ち越し(or逆転し)、勝利した」場合も含みます。

この場合は、原則、決勝点が入った時に登板していた投手が勝ち投手になります。

球団123456789
先攻3022100008
後攻21020040X9
(後攻)
A投手:2.1回5失点(1回~2回1/3)
B投手:1.2回2失点(2回1/3~4回)
C投手:2回1失点(5回~6回)
D投手:1回無失点(7回)
E投手:1回無失点(8回)
F投手:1回無失点(9回)

この場合、後攻チームは7回に逆転していますので、7回を投げたD投手が勝ち投手となります。

このシチュエーションなら、7回表でD投手が流れを引き寄せ、7回裏、その流れに乗って打線が爆発、そのまま勝利した感じなのでD投手の勝ち投手は妥当と言えます。

問題は次のシチュエーション。

球団123456789
先攻0000000022
後攻200000001X3
解説者
後攻チームのA投手はランナーは出すものの要所はきっちり抑えるピッチングで8回無失点の好投を見せ、勝ち投手の権利を得る。しかし9回、守護神のB投手が四球から痛恨の1発を浴び同点に追いつかれ先発の勝ちが消えてしまう。しかしその裏にサヨナラヒットが出て試合には勝利。

この場合、1回2失点の守護神B投手が勝ち投手になります(その裏のサヨナラヒットが決勝点になるため)。

しかし、先発が降板した8回までを見れば初回の2点先制以降、1度も追いつかれていないのでこのままいけば先制点=決勝点になるため、解説者が言う通り、A投手は勝ち投手の権利を得たまま降板したわけです。

ですが、B投手が打たれたせいで同点に追いつかれたため、A投手の勝ち投手の権利は消滅してしまったのです。

そのB投手は勝ち投手。

これを俗に「勝ち星を先発投手から“盗む(盗んだ)”」と表現されます。

もちろん名誉なことではありません。

例外について

基本的には「決勝点が入った時に登板していた投手」が勝ち投手になりますが、

その投手が、
・1イニング未満
・失点している
・その投手の後を受けた投手が勝ちに貢献するような効果的な内容であった

の条件を満たす場合、例外として勝利投手にはならず、その投手の後を受けた投手が勝ち投手となることがあります。

0球勝利ってあるの?

実際には“存在します”。ただしそれこそレア中のレアで、メジャーではありますが、日本プロ野球ではまだ記録されていないそうです。

たとえばこのケースなら、B投手は0球のまま勝利を掴むことが出来ます。

球団123456789
先攻0000000000
後攻000000001X1
解説者
緊迫した投手戦になった。後攻チームの先発、A投手は9回表2死にヒットを打たれ降板。その後を受けたB投手は1球目を投げる前に塁を離れていたランナーを牽制で刺すことに成功。その裏、Z選手のサヨナラHRにより勝利を収めた。
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勝ち投手の権利がつくのは誰?(実践編)

1.

球団123456789
先攻3101000005
後攻2200000004
(先攻)
A投手:5回4失点(1回~5回)
B投手:2回無失点(6,7回)
C投手:1回無失点(8回)
D投手:1回無失点(9回)

2.

球団123456789
先攻3101000005
後攻2200000004
(先攻)
A投手:4回4失点(1回~4回)
B投手:1回無失点(5回)
C投手:1回無失点(6回)
D投手:2回無失点(7,8回)
E投手:1回無失点(9回)

3,

球団123456789
先攻0102000014
後攻01002011X5
(後攻)
A投手:6回3失点(1回~6回)
B投手:0.2回無失点(7回~7回2アウト)
C投手:0.1回無失点(7回2アウト~7回3アウト)
D投手:1回無失点(8回)
E投手:1回1失点(9回)

4.

球団123456789
先攻0010400409
後攻0010005017
(先攻)
A投手:6回1失点(1回~6回)
B投手:1回5失点(7回)
C投手:1回無失点(8回)
D投手:1回1失点(9回)

みなさんは誰が勝ち投手が分かったでしょうか?

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勝ち投手の権利がつくのは誰?(解答編)

1.

球団123456789
先攻3101000005
後攻2200000004
(先攻)
A投手:5回4失点(1回~5回)
B投手:2回無失点(6,7回)
C投手:1回無失点(8回)
D投手:1回無失点(9回)

これは4回表の1点が決勝点になっています。そして先発のA投手は5イニングを投げています。

よって勝ち投手はA投手です。

2.

球団123456789
先攻3101000005
後攻2200000004
(先攻)
A投手:4回4失点(1回~4回)
B投手:1回無失点(5回)
C投手:1回無失点(6回)
D投手:2回無失点(7,8回)
E投手:1回無失点(9回)

スコアは1.のものと同じですが、A投手は4イニングしか投げていないので勝ち投手にはなり得ません。

この場合は残りのB~Eの中から最も勝利に貢献した救援投手が選ばれますが、この場合なら他の投手よりも1イニング以上多く投げたD投手が勝利投手にふさわしいと考えられます。

よって勝ち投手はD投手です。

3,

球団123456789
先攻0102000014
後攻01002011X5
(後攻)
A投手:6回3失点(1回~6回)
B投手:0.2回無失点(7回~7回2アウト)
C投手:0.1回無失点(7回2アウト~7回3アウト)
D投手:1回無失点(8回)
E投手:1回1失点(9回)

今回は決勝点は7回裏の1点です。

このときに登板していた投手は、7回表を終了させたC投手という扱いになります。

よって勝ち投手はC投手です。

4.

球団123456789
先攻0010400409
後攻0010005017
(先攻)
A投手:6回1失点(1回~6回)
B投手:1回5失点(7回)
C投手:1回無失点(8回)
D投手:1回1失点(9回)

先発は6回1失点の好投で、勝ち投手の権利を得たまま降板しましたが、B投手が5失点の大炎上で逆転されA投手の勝ち星消滅。
しかし、その裏に再逆転し、そのまま逃げ切り、というシチュエーションですね。

この場合、結局決勝点は8回表ですから、7回を終わらせた投手であるB投手が1回5失点という成績にもかかわらず勝ち投手になります。
(※1イニングは投げているため、前述の例外も適用されない)

よって勝ち投手はB投手です。

ちなみに4番に関しては実際の試合を元にしました。4/8の中日×阪神戦です。

中日の又吉投手が1回5失点の大炎上で一旦は逆転されるも、8回表、阪神のマテオ投手も0.1回4失点の大炎上で中日が逆転。

その結果、6回1失点の先発、笠原投手や8回に1回無失点で抑えた鈴木博投手を尻目に又吉投手が勝利投手となりました。

5失点しようと勝ち投手は勝ち投手なので、当てにならないときは当てにならないです。

まとめ

長々と書きましたが、勝ち投手については以下のことを抑えておけばまず大丈夫です。

・基本は「決勝点が入った時に登板していた投手」が勝ち投手
・ただし先発投手は5回(5回コールドなら4回)以上投げないと勝ち投手になれない
・先発が5回待たずに降板した場合は中継ぎ投手の中から投球回数などを勘案して勝ち投手が決められる。
同点(逆転)された場合は、その前に登板した投手の勝ち投手の権利が消滅する。

これだけのことが分かっていれば大体勝ち投手が誰なのか分かりますので、そのような目線からも野球が楽しめると良いですね。

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おまけ

予想以上に長くなったので、公認野球規則10.19による勝ち投手の条件をここに載せておきます。

10・19『勝投手、敗投手の決定』
(a)先発ピッチャーは、最少5回完投した後に退いたこと、しかもそのとき自チームがリードの状態にあって途中タイまたはビハインドになることなく、そのリードが試合の最後まで持続されたこと、などの条件がそろったとき初めて、勝利投手の記録が与えられる。
(b)勝利投手を決定するのに、先発ピッチャーは少なくとも5回の投球が必要であるという規則は、6回以上の試合には全て適用される。試合が5回で終了した場合には、先発ピッチャーは最少4回完投して退いたこと、しかもそのとき自チームがリードの状態にあって、途中タイまたはビハインドになることなく、そのリードが試合の最後まで持続されたこと、などの条件がそろったときに初めて勝利投手の記録が与えられる。
(c)勝チームの先発ピッチャーが本条(a)(b)項の各項目を満たさないために、勝利投手の記録を得ることができず、2人以上の救援ピッチャーが出場した場合には、次の基準に従って勝利投手を決定する。
(1)先発投手の任務中に、勝チームがリードを奪って、しかもそのリードが最後まで保たれた場合には、勝利をもたらすのに最も有効な投球を行ったと記録員が判断した一救援ピッチャーに、勝利投手の記録を与える。
(2)試合の途中どこででも同点になれば、ピッチャーの勝敗の決定に関しては、そのときから新たに試合が始まったものとして扱う。
(3)相手チームが一度リードしたならば、その間に投球したピッチャーはすべて勝利投手の決定からは除外される。ただし、リードしている相手チームに対して投球している間に、自チームが逆転して再びリードを取り戻し、それを最後まで維持したときは、そのピッチャーに勝利投手の記録が与えられる。
(4)ある救援ピッチャーの任務中に自チームがリードを奪い、しかもそのリードが最後まで保たれたときに限って、そのピッチャーに勝の記録を与える。ただし、この救援ピッチャーが少しの間投げただけで、しかもその投球が効果的でなかったときは、勝の記録が与えられないで、彼に続いて出た救援ピッチャーが、リードを保つのに十分な効果的な投球をしたならば、このピッチャーに勝を与えなければならない。
(d)ピッチャーが代打または代走と代わって退いた回に得点があり、退いたピッチャーが次に該当すれば、この得点をそのピッチャーが任務中に得たものとして記録する。すなわち、そのピッチャーが退くまでにリードしていたか、または退いた回にリードを奪い、しかもそのリードが最後まで維持された結果、退いた回にあげた得点をそのピッチャーが任務中に得たものとして記録すれば、勝利投手となることができるような場合がそれである。
(e)ピッチャーがビハインドで退くか、退いた後に自己の責任となる得点があったためにビハインドになり、その後自チームが同点とするかリードしなかった場合には、投球回数の多少に関わらず、最初にビハインドを招いたピッチャーに敗が記録される。
(f)完投ピッチャーでなければ、シャットアウト(無得点勝利)の記録は与えられない。ただし、第一回無死無失点のときに代わって出場したピッチャーが、無失点のまま試合を終わった場合に限って、完投ピッチャーではないがシャットアウトの記録が与えられる。ピッチャーが2人以上リレーしてシャットアウトしたときは、リーグの公式投手成績にその旨の説明をつける。

出典:公認野球規則(抜粋) URL:http://urawa-senior.net/kisoku.html

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